「貧乏人の経済学」~ノーベル経済学賞受賞者が貧困について分析した援助関係者必読の本の概論を要約して説明します!~

 こんにちは、Z-shanです。

 この記事では、2019年にノーベル経済学賞を受賞した米アマチューセッツ工科大学(MIT)のアビジット・バナジー教授等の著書、「貧乏人の経済学〜もういちど貧困問題を根っこから考える〜」の概論を解説します。最近の開発経済学の研究としても有名な本ですので、興味のある方は是非読んでみてくださいね。

本の概要

 

①援助に関するこれまでの研究について

 本書は題名の通り貧困問題の原因は何か、また貧困問題をどうしたら解決できるのかについて書かれた本です。作者はまず、これまでに貧困問題を考える際に大きく2つの理論が提唱されてきたと説明しています。

 一方は、援助を沢山することで貧困問題は解決するという理論です。援助によって貧困状態を発生させにくい仕組みを作り、発展を促すというものです。ビック・プッシュ(援助倍増論)という言い方もされます。

 

 もう一方は援助は必要最低限に抑えて、出来るだけしないほうが良いという理論です。援助を行うことで援助に依存してしまうこと、またそもそも当事者に貧困問題解決の意志があれば問題は解決するのだから必要ないという理論です。

 この論争は援助の現場でも度々問題になります。例えばマラリア撲滅のためには殺虫処理した蚊帳を使うことが効果的とされますが、援助で蚊帳を配るべきか、価格補助をしつつ住民に買ってもらうべきかなどです。どちらも間違っていないように思いますが、あなたが援助の担当者だったらどうするでしょうか?

②筆者の主張

 これに対して筆者は、そもそももっと援助対象者を知る必要があり、それに基づいて援助をするかどうか、するならどの様な援助が最も効果的なのかを決定するべきだと主張しています。

 蚊帳の例であれば、殺虫剤処理した蚊帳が普及していない原因は何か、現地の人々の生活を定性的・定量的に知ることから始めるべきだということです。調査したら、現地人は蚊帳の効果を知らないからかもしれないですし、蚊帳を買う資金が無いかもしれない、そもそもそこまでマラリアが深刻な問題だと思っていないかもしれないです。もしかしたら我々が思いもしなかったようなこと(蚊帳よりも祈ったほうが効果的だと信じられている等)が分かる可能性もあります。これら問題の原因を詳細に調べ、原因に適したアプローチをすることで、案外簡単にお金や労力もかけずに解決可能であり、開発援助とは、諸問題の原因を地道に精査して解決していくことだと主張します。

 本書では、筆者の主張を食糧、公衆衛生、教育、制度といった貧困と深くかかわる分野に分けて、実際に調査を行い貧困削減に成功した事例とともに説明されています。

 

Z-shanの感想

 国際協力の仕事をしている私としては、本書は3つの点で勉強になりました。

①調査や援助プランの立案手法

 特に実際の調査の手法が勉強になりました。どのようなデータを使ってどのような調査を基に効果的な援助プランを立てるのかという部分です。大学院時代に調査の手法については学んでいましたが、プロジェクトを立案する際に何をどのくらい調べることで援助の対象者の実情が見えてくるのかをこの本で学びました。

②援助の対象者

 また、援助の対象者も私たちと同じ人間なのだということを改めて強く認識させられました。例えば食糧よりも、テレビを買うことが大事だと言う人、栄養うんぬんより、美味しいものが食べたいという人などなど。これらは先進国に暮らす私たちを含め、誰もが思うことであり、援助だからと言ってこうした視点を無視してはいけないということです。

③汎用性のある理論の構築

 少し難しいですが、本書ではランダム化比較試験(RCT)という手法を用いた調査を取り入れています。詳しい内容はこの記事では説明しませんが、この手法を用いることで複数国間での共通原因を導きだし、汎用性の高い理論の構築を試みています。この方法は最近の開発援助でも取り入れられ始めており、注目の手法です。本書を読むことで、この手法の特徴やどの様に実際のプロジェクトで私用するのかを知ることが出来ました。

さいごに

 この本は実際に仕事をしていても、読む度に色々と問題解決のヒントをくれるので、私自身何度も読み返しています。原書は10年以上前に書かれたものなので、最新の研究では、どんどんアップデートされていっていますが、そうした研究を深く知るためにも、今後もより多くの方に読まれる書籍になるのではないかと思います。

 援助や貧困問題に興味を持たれた方は、是非、ご一読ください。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

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