こんにちは!コウイチローです!
日本のODA(政府開発援助)は他国と比べて、ある特徴を持っています。この記事では、日本のODAの特徴について分かりやすく解説します。
※そもそもODAって何?という方はこちら。
日本のODAにおける4つの特徴
(1)自助努力支援(オーナーシップの尊重)
そもそもODAの最終的な目的は、途上国が援助を受けなくても自国の経済活動だけで国を運営できるようになることであり、その経済成長の基盤を作ることにあります。
つまり一時的な支援で終わりではなく、被援助国が自らの力で経済成長していこう(=自助努力)という気持ちを起こさせる必要があるのです。そのため、日本のODAでは自助努力の促進が重視されています。実際、外務省が公表している政府開発援助大綱(*1)では、基本方針の1番に以下の文があります。
(1)開発途上国の自助努力支援
良い統治(グッド・ガバナンス)に基づく開発途上国の自助努力を支援するため、これらの国の発展の基礎となる人づくり、法・制度構築や経済社会基盤の整備に協力することは、我が国ODAの最も重要な考え方である。このため、開発途上国の自主性(オーナーシップ)を尊重し、その開発戦略を重視する。(一部抜粋)
(出典:外務省)
日本のODAでは、有償資金協力(円借款)を通じて自助努力を促しています。下の円グラフを見てみると、多国間援助の約半分、二国間援助の6割以上が有償資金協力だと分かります。有償資金協力を純粋な国際協力という意味でODAと見なすことに後ろ向きな国もあり、ODAにおける有償資金協力の割合がここまで大きい国はほとんどないです。ちなみに、開発援助委員会(DAC:Development Assistance Committee)が発表した2018年度のデータでは、日本の援助の6割以上が有償資金協力だったのに対し、DAC加盟国(簡単に説明すると先進国の集まり)の平均は2割そこそこでした。(*2)
(2)要請主義
要請主義とは、公式に途上国から日本国政府に「こういう援助をして欲しい!」という要請に基づきODAを検討・実施することです。(*3) これは、上記の自助努力支援と密接につながっています。途上国自身が自ら考え要請を出すことで、自分の国に何が足りていないのか、考えて行動するきっかけになるためです。
しかしながら、途上国側に任せてもなかなか要請を出せないことも多いため、実際には官民問わず様々な日本の関係者が案件形成のために活動しています。
(3)インフラ整備に関わる案件が多い
インフラは経済成長の基盤として不可欠です。ここでいうインフラとは、港湾や空港(輸出入)、道路や鉄道や橋(内国輸送)、発電所や下水処理場、送電線や下水管の整備などです。インフラが不十分だと、発展に必要な資機材の運搬や利用、住民の生活基盤の向上がとても難しくなってしまいます。
さらに営業活動や生産拠点の設置などが難しく、民間企業からの海外投融資の資金も集まりにくいです。インフラの整備は基本的に円借款で支援されます。これも自助努力支援の方針に基づいており、インフラを整えることで、その後は途上国自身の頑張り次第で、発展できる国の基盤を作るのです。
(4)アジア地域への支援が多い
まずは過去の記事に載せた資料をご覧ください。2018年版開発協力白書(*4)のデータを基に、援助対象国の地域別割合をまとめています。
この資料に見ると二国間ODAの約7割がアジアに集中していることが分かります。外務省が作成した政府開発援助大綱における重点課題として、「日本と緊密な関係を有し、日本の安全と繁栄に大きな影響を及ぼし得るアジアは重点地域である。」(*3)と書かれています。地域的にも近く、政治的・経済的にも密接な関係があり、成長率の高いアジアとの関係は、日本の経済と安全保障の面でとても重要だということですね。
まとめ
この記事で書いた日本のODAの特徴をまとめると以下のようになります。
- 援助を受ける国の自助努力を促すため、返済義務を科す円借款(有償資金協力)の割合が高い。
- さらに要請主義に基づき、援助を受ける国の自助努力を促す。
- 政治的・経済的に密接な関係にあるアジア諸国への援助が大部分を占める。
キーワードは自助努力・要請主義・アジアですね。
この記事を通じて日本のODAの特徴を少しでも理解していただけたら幸いです。
直近のデータを分析し、日本の援助動向をより詳細に解説した記事がありますので、「もっと知りたい!」という方は、以下も是非参照してみてください!
【4分で分かる】日本が最もODAで支援している国は○○!形態別・地域別で解説(日本のODAの現状PART2)
【5分で分かる】日本のODA支出額は世界で第○位!最近の推移・動向、世界に占めるシェアまでを簡単に解説(日本のODAの現状PART 1)
オススメ書籍のご紹介
最後に、日本のODAについて「もっと勉強したい!」という方にオススメの書籍を紹介します。筆者が実際に読んでみた中で、できるだけ分かりやすく読みやすい本を選びました。
(1)開発経済学の超入門編
1冊目はこちら。
日本の開発経済学の権威的存在である渡辺利夫先生の書籍です。少し古い本ではありますが、一読の価値ありです。予備知識がなくてもスラスラと読みやすい文章ですが、内容は充実していて知的好奇心を刺激してくれます。まさに超入門編として、オススメの1冊です。内容は、「マルサスの罠」「人口転換」「産業構造の転換(緑の革命、インダストリアリズムなど)」など一般的な開発経済学の基本を押さえつつ「日本のODAの特徴」の他、渡辺先生の専門分野であるアジアに特化して書かれた章もあります。
(2)もう少し踏み込んだ基本編
2冊目はこちら。
こちらも、渡辺利夫先生の書籍です。私は決して渡辺先生の関係者ではございませんが(笑)、「読みやすい」+「しっかりした内容」という意味で、渡辺先生の書籍は素晴らしいのです。上記も含め、学術的な本なので、「涙が溢れた」とか「衝撃を受けて人生が変わった」みたいな感想を抱くことはありませんが、真剣に国際協力分野(特に開発経済学)への見識を広げたいという方には、オススメの書籍です。グラフや表なども多く、1冊目の本と扱う内容は重なっている部分がありますが、より学術的に詳しく説明されています(けど読みやすい!)。
最後までお読みいただきありがとうございました!
【4分で分かる】ODAはなぜ必要か?援助される国/援助する国のメリットは?
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(参考文献)
*1. 外務省 開発援助大綱
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/seisaku/taikou/taiko_030829.html
*2. OECD ODA-2018-complete-data-tables
*3. 渡辺利夫(2010)開発経済学入門 第3版 東洋経済新報社
*4. 外務省 2018年版 開発援助白書